ホスト恋
喧嘩の原因は旅行のお金。
『そういえば…私、払うよ。そのくらいは払える』
「もう払っちゃったからいいよ」
『いつも、払ってもらってるから今回は払う。払わせて、お願い』
私が、自分のカバンからお財布を出した瞬間に蓮の顔付きが変わった。
「払わなくていい。財布しまえ。」
『だって…』
「だって、じゃねぇよ。財布開けたら殺すよ」
『なんで、そういう事言うの』
「いいからしまえ!早く。」
と、
私の財布を指差す蓮。
その眼差しはいつもの優しい蓮とは程遠いものだった。
正直、怖くて…
思わず、目を逸らしてしまった。
私も行くんだし…
少しでもお金を払うのが当たり前。
いつも、ご飯を食べる時も「俺が払うから」って…払ってくれるからこそ今回ばかりは引きたくなかった。
『払う』
「じゃ、お前、俺の客になるか?」
『何で、そうなるの?』
「そういう事だろ?」
『所詮、蓮は最初から客としてしか見てなかったんじゃないの?』
私は涙が止まらなくて…
でも、今日の蓮は抱き締めてくれない。
それ以上は何も言わず、私の前から去ってしまった。
『…帰っちゃった。』