ただ、愛してる。
love3
「「「かんぱーい」」」


カチンとビールのジョッキを鳴らし合って、ゴクゴクとビールを飲む。

夜7時、予定通りに多恵子と夏樹とで居酒屋に来た。


「ぷぁー、やっぱりビールうめぇ!」

「本当!仕事の後は1番美味しく感じるわ」


夏樹と多恵子がそんな会話をしている間、私はゴクゴクと飲み進めてダンッとジョッキをテーブルに置いた。


「びっくりしたぁ。佐奈が一気飲みって珍しいね」

「何かあったのか?」


私の行動に、驚いた表情で見る多恵子と夏樹。

中津さんが実は本性を見せた、なんて言えない。
言っても信じてもらえないだろうし。

私だって未だに信じられない。


「別に何もないよ。喉渇いてたの」


なんて適当な嘘をついて、枝豆を手に取り食べていく。


「そう言えば、休憩の時に中津さんに呼び出されたのは何だったの?」

「え!?」


多恵子の唐突な質問に、ドキッとして思わず枝豆を落としてしまった。

やば、動揺したのがバレてしまう…!


「ちょっと、ね」


急過ぎて何も浮かばなかった…

出来るだけ平静を装って、誤魔化すように枝豆ばかり食べる私。

明らかに不自然だ。


「中津さんって、あの中津さん?」

すると、夏樹が思い出したかのように会話に入ってきて、私はさらにドキドキと騒ぐ胸を落ち着かせようと、ビールを注文した。

落ち着け落ち着け、私。


「そうそう、夏樹の部署から異動してきた中津さん。佐奈、説教でもされてるんじゃないかって、心配したんだよー」

「あー、うん。実は…そうなんだよね」


本当は違うけど。

でもここは、多恵子に合わせとけば…


「え、マジで?俺も怒られたことあんだよ」

「あはは、夏樹は怒られてるのが想像つくわ」

「どういう意味だ」


多恵子と夏樹の会話に、苦笑い。

いや、苦笑いというより顔は引きつってるかもしれない。
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