ただ、愛してる。
本当は中津さんを好きだと自覚した時から、思ってた。

私なんかが、中津さんの隣に立っていい訳ないって。


「……佐奈」


心配そうに私の名前を口にする多恵子。

私が何も言わなくても、私の表情を見て何かを察したんだろう。

多恵子はそれ以上は、何も聞いてこなかった。


好きと思っても、叶いそうにない恋はたくさんある。

私が中津さんに想いを告げても、きっと迷惑なだけ。
仕事に支障が出るだけ。

一緒に働くことが、


苦痛になるだけ。


人を愛すより愛された方が楽。

今までもこれからも、その方がいいって思ってた…



『あんたなんていらない』


過去の記憶が、私を蝕む。

それなのに、


『お前、面白いよな』


無邪気に笑う中津さんの笑顔が頭から離れない。

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