ただ、愛してる。
カチャン。


玄関の扉を閉めて、真っ暗なリビングに明かりをつける。

真奈はもう寝たのかな…
そりゃもう23時過ぎてるもんね。


そっと真奈の部屋を覗きこむと、ベッドで眠る真夏の姿が見えた。

高校3年生の真奈は、私のたった一人の家族。


『待って、』

『着いてこないでよ、うっとうしい。あんたなんていらない。あんた達なんて、』


甦る記憶に目をギュッと閉じた。

今は思い出したくないのに!

その場でしゃがみ込んで、膝をかかえた。


これは…私の癖。
嫌なことがあると必ずこうしてしまう。


「愛って、何だろう」


人は傷つくために、誰かを好きになるの?

人は傷つけるために、誰かを側に置いとくの?


分からない。

私は、





分からない。



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