ただ、愛してる。
「いいから冷やせ」

「あ、ありがとうございます」


濡れたハンカチを借りて、それを腕に当てる。
当たり前だけど、冷たい。


「何であんな奴と付き合ったんだ」

「え?」

「キミならもっといい男と出会えるはずだろ」


私の隣にもたれ掛かったその人は、空を見上げながら話しかけてきて。

私は下を向いた。


「だんまりか。まぁ今日初めて出会った男に話せる訳ないだろうが、ほどほどに…「…るさい」

「え?」

「うるさいって言ったのよ!何も知らないくせに!……あ、」

「………」

「ごめんなさい!」

「え、おい!」


私は頭を下げて、その場から逃げるように走った。

何やってんの、私。
あんなのただの逆ギレだ。

あの人は助けてくれて、私を気にかけて言ってくれてるのを分かってるのに…


でも、怖かった。
あのままだときっとあの人は、私の心の闇に入ってくる。

そんな気がした。
< 3 / 35 >

この作品をシェア

pagetop