ただ、愛してる。

「え！？」


私の大きな声に、周りの人たちがバッとこっちを振り向いて、私は口を咄嗟に手で覆った。

嘘……なん、であの人が…


「佐奈、知り合いなの？」

「いや、知り合いというか…」

「ゴホン。そこ！」

「「…すみません」」


私の鼓動が速くなる。

何でこんなにドキドキしてるのか、分からないまま、私の視線は彼に向いていた。


「えー、中津くんは営業部で新人教育を担当しながら経験を積んでいたんだが、今回わが社の跡を継ぐことが決まり、わが社の柱となる企画部に異動になった。では、簡単に挨拶を」

「改めまして、中津です。跡を継ぐと言っても、将来的にってことなので今すぐではありません。まだまだ経験不足なことも多いので、色々と指導して下さい。よろしくお願いします」


深々と頭を下げる彼。


「ねぇ、佐奈。中津さんってイケメンだよね」


コソッと話す多恵子の声は、私に届くはずもなく、私は混乱していた。

あ、跡を継ぐ？
え、どういうこと？


ガタッ

「佐奈？」

「ちょっと目眩が…」


あまりにも衝撃的な再会に、私は頭がくらんだ。

まさか同じ会社の社員だったなんて…！


あんな場面を見られて助けられた挙げ句、酷いいい逃げをしたのに…



最悪だ。