ただ、愛してる。
「ふふ」

「何がおかしいのよ」

「別にー?なんか佐奈がイライラしてるからおかしくって」


人がイライラしてるのを見ておかしいって、どんな悪趣味よ。

あれから多恵子には全て話すと、それからというもの、多恵子はずっとこんな調子で。

カチカチとボードを叩きながら、私はパソコンへと視線を移して、誤字を修正していく。

我ながら、こんなミス信じられない。


「でもさ、暴力振るわれそうになってるのを助けてくれたのが中津さんって、凄く運命的よね」

「どこがよ」

「だって同じ会社で、こうやって一緒に働いてるんだし、こんなことそうそうないでしょ」

「………」


多恵子の言葉にピタッと、私は手を止めた。

運命…ねぇ。


「あれ?佐奈も運命だって思ったりして…「ないわよ」


運命なんて…ある訳ない。


私は、カチカチと再び手を動かした。
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