ひるなかの一等星
学校なんて嫌いだ。
退屈で、息苦しくて、居心地の悪い場所。
━━━ガラガラガラ···
引き戸を開ければそこは、地獄だ。
「······」
黙って自分の机に歩く。念のため座る前に椅子を指先で触る。異常なし。
席に座って、念のため机の中を覗きこむ。異常なし。
私はとりあえず一息ついて、鞄から文庫本を出した。
「······雲居(くもい)さん」
きた。
「······何ですか?」
「おはよ。今日の放課後、女子みんなでカラオケに行こうって話なんだけど」
話しかけてきたのは、女子の中でも派手グループの中心格・宮崎奈実(みやざき・なみ)だ。
「雲居さんもどう?」
「遠慮しときます。どうもありがとう」
私は形ばかりの笑顔をつくって、彼女の誘いを断った。
彼女たち、からの。
黙って席を立ち、教室を出れば、
「何アレ。まじウザくない?」
「せっかく誘ってあげてんのに」
これだ。
私は、一言で言えば、クラスで『浮いている』。
馴染めなかったという訳じゃなくて、あることがきっかけで、派手グループに目をつけられて、それ以来まあその、孤立してしまったというわけ。
(別に構わないけど、教室にいると絡まれるから出なきゃならないのが面倒だな······)
私はため息をつきながら廊下を進み、腕時計を見た。
8時7分。まだ時間がある。
手には読みかけの本がある。
「······図書館、行くか」
私は突き当たりの階段を登って、3階の図書館へ向かった。
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