ひるなかの一等星
消音設計の扉を開けると、紙の匂いが風に乗って運ばれてきた。朝だから窓を開けているのだろう。
私は室内に入って扉を閉めると、貸出カウンターに1番近い椅子に座った。
本を開いて、読みふけっては、時折はっと時計を見る。そんなことを3度ほど繰り返した後、背後から知った声が聞こえた。
「真希(まき)ちゃん?」
「! 優(すぐる)さん」
「おはよう」
振り向いた私の顔を確認してから歯を見せて笑ったのは、うちの学校の司書教諭の蒼井(あおい)優さんだ。
「おはようございます。今日も早いですね」
「さっき来たところだよ。真希ちゃんこそいつも早起きお疲れ様」
「ありがとうございます」
優さんはにこにこ笑いながら私の読んでいる本を覗き込んだ。
白衣の裾がわずかに床と触れ合う。
「あ。それ最近発売されたやつだよね?」
「はい。もう読まれましたか?」
「うん。僕は結構好きだな」
『すき』
心臓がどくんと大きく鳴る。
「真希ちゃんが読み終わったら、また一緒に本の話をしようか」
「あ······はい。是非」
私は少し顔を伏せながら、笑顔をつくって頷いた。
「でも今はそろそろ時間だよ、戻らないと」
「え?あっ」
時計を見る。針は8時35分を示している。朝のホームルームが40分からだから、もう教室に帰らないといけない。
「またおいでね」
「はい。ありがとうございます」
急ぎ足で出ていく私を見送る優さんは、私に向けてばいばいと手を振ってくとれた。
(······)
鼓動が耳に響いてうるさい。
(優さん······)
笑顔を、思い浮かべるだけで。
こんなに······。
(好きです、優さん)
私は階段を降りながら、恋煩いのため息をこぼした。
私は室内に入って扉を閉めると、貸出カウンターに1番近い椅子に座った。
本を開いて、読みふけっては、時折はっと時計を見る。そんなことを3度ほど繰り返した後、背後から知った声が聞こえた。
「真希(まき)ちゃん?」
「! 優(すぐる)さん」
「おはよう」
振り向いた私の顔を確認してから歯を見せて笑ったのは、うちの学校の司書教諭の蒼井(あおい)優さんだ。
「おはようございます。今日も早いですね」
「さっき来たところだよ。真希ちゃんこそいつも早起きお疲れ様」
「ありがとうございます」
優さんはにこにこ笑いながら私の読んでいる本を覗き込んだ。
白衣の裾がわずかに床と触れ合う。
「あ。それ最近発売されたやつだよね?」
「はい。もう読まれましたか?」
「うん。僕は結構好きだな」
『すき』
心臓がどくんと大きく鳴る。
「真希ちゃんが読み終わったら、また一緒に本の話をしようか」
「あ······はい。是非」
私は少し顔を伏せながら、笑顔をつくって頷いた。
「でも今はそろそろ時間だよ、戻らないと」
「え?あっ」
時計を見る。針は8時35分を示している。朝のホームルームが40分からだから、もう教室に帰らないといけない。
「またおいでね」
「はい。ありがとうございます」
急ぎ足で出ていく私を見送る優さんは、私に向けてばいばいと手を振ってくとれた。
(······)
鼓動が耳に響いてうるさい。
(優さん······)
笑顔を、思い浮かべるだけで。
こんなに······。
(好きです、優さん)
私は階段を降りながら、恋煩いのため息をこぼした。