ひるなかの一等星
朔月
日吉宙、と彼は名乗った。
(いや、何も思い当たらない······)
私は内心で首をかしげて、上機嫌の彼を見やった。
メガネの奥の瞳と視線が絡む。急いで顔をそらした。
(何なの。いったい私が何をしたの。目立つようなことしないで)
ため息を漏らすと、先生がクラスを見回して言った。
「じゃあ、日吉くんの席だけど、まだ決まってないし、いい時期だし······席替えでもしましょうか」
教室中から声が上がる。前の席の人たちは喜び、後ろの席の人たちがげんなりとした顔をする。
「先生くじ作ってきたのよ。はいはい、早く引いてね〜」
普段はおっとりしてるのにこういう時だけ行動が早いですね、先生。
という言葉を喉で押しとどめ、くじの入った箱に手を入れる。

━━━9。

「黒板にそれぞれの席の番号書いておくからね〜」
見ると、私の次の席は一番廊下側の最後列。とてもいい席だ。カバンを持って移動して、私は少し嬉しい気持ちで席についた。教室全体が見渡せる。とても落ち着く。
が、私の平穏は長くは続かなかった。
「あれ、真······雲居、そこ?」
「真希ちゃん!オレ隣だよ!よろしく!」
「······」
なんと私の前の席は大駕、隣は日吉宙だった。
······。
神様は、私を見放したんだろうか。
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