ひるなかの一等星

「真希ちゃんと隣か〜嬉しいな!!いろいろと教えてよ!」
「······」
どうしてこんなにツイてないんだろう。
「今日は特に連絡事項ないから、朝のホームルームは終わりです!転入生の日吉くんは、クラスメイトの人に学校のことをいろいろ教わってね」
「ハイ!」
やけに明るい声で返事をする。
私はため息をついて机に突っ伏した。どのくらいの期間この席でいるんだろう。隣の人と一緒に活動する授業はどれだけあったっけ。考えれば考えるほど気が滅入る。
「ねぇ真希ちゃん真希ちゃん!」
「······何ですか?」
「放課後とか暇!?」
「······」
何を求めてくるつもりだろう。学校を案内しろとか?そんなこと、どうして私がしなくちゃいけないんだろう。
「暇なら、学校の周り教えてよ!」
「周り······?」
「そう。オレこの近くで一人暮らししてるんだけど、スーパーの場所とかいろんなお店とか、教わっておきたい!」
······学校内の前に、外ですか。
私は少し考えてから、前の席を指した。
「私より、クラス委員の七橋くんに頼んだら?」
「えっ」
大駕が驚いてうしろを向く。
「クラス委員がまず面倒を見るべきじゃないかな。私みたいなのよりも」
「く、雲居······」
困ったのか困ってないのかよくわからない表情で大駕が私と日吉くんを見比べる。
「えっと、俺はいいけど······」
「オレは真希ちゃんとがいいんだよ」
「······は?」
つい素っ頓狂な声を出してしまった。
「オレは真希ちゃんと話したいの、歩きたいの!クラスになじむとかは、その後!」
「いや······意味わかんないよ」
本当にわけがわからない。
日吉くんはまるで捨てられた子犬のような目で私を見る。私がため息をつくと、身長の割に華奢な身体は縮こまって私の顔を覗き込んだ。
「ごめん、怒った?オレ、真希ちゃんと仲良くなりたくて」
「······」
どうしろっていうんだ。
こんな顔をされて、こんな風に懐かれて。
私には彼を手懐けた覚えがない。
「······いいよ」
日吉くんが肩を落としてしまい、それによって生まれた沈黙に耐えかねて、私はため息とともにそう返事をした。
「本当に!?」
「その代わり、あんまり私に構わないで。案内をしたら、貴方との付き合いはそれでおしまい」
「えっ······」
日吉くんの表情がまた悲しさに歪む。
「······目立ちたくないの。静かに生活していたいの
私はそれだけを告げて、開いた文庫本に目を落とした。
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