堕天使と呼ばれる女
聖羅は、水谷理事長との会話を一方的に遮断して病院の敷地を後にする…
まさか、水谷理事長が意識にアクセスしてくるとは、聖羅には予想外の展開だった…
水谷理事長は、組織でも一目置かれる権力者であると同時に、実績もあるドクター。そして、綾瀬総合病院の実力者…
しかも、それだけのポジションに就いた割には、不自然なくらいに水谷理事長は若いのだ。
これも、能力の成せる業なのか…
【おい!!聖羅!
何やってんだよ!】
派手に邪魔する思考が、聖羅の意識に介入してきた…
【うっさいな!!
今行くよ!!
お願いだから、少し黙ってて!!】
聖羅は少し怒鳴り気味に和也に返した。
『ちょっと、アイツには八つ当たりし過ぎたかな…
後で、事情を説明すればいっか。』
病院から少し離れた所で、聖羅は立ち止まり、後ろを振り返った。
聖羅が振り返った場所は、まだ病院が遠くに見える…
「えっ!?」
『…今、誰かと視線が合った?』
聖羅はそんな気がした…
そう…聖羅の視線は、その時、病院の誰かの視線と確かに交わっていた。
水谷理事長では無い、他の誰かの視線と…
これはearthからの無言のメッセージ。
聖羅が、earthから逃れられない宿命であるという…