堕天使と呼ばれる女
開いた扉から、スミレが出てきた。

しかし、さっきと少し様子が違うように見える。


「あっ、スミレさん!!」



明るく話しかけようとした聖羅は、そこで言葉を飲んだ。

スミレの目に、光るものが見えた気がしたから…

「ど、どうかしたんですか?」

そう尋ねる聖羅に、スミレは少し間を置いてから、扉の奥へ消える前と変わらない笑顔と共に、

「…何も無いわよ!」

そう気丈に返した。


「おじいさま、会うって言ってるわ。
 案内するわね。」

そういって、スミレは聖羅たちに、自分についてくるよう促す。


「…わかりました。」

納得出来ないと言わんばかりの表情を浮かべつつも、聖羅はスミレの指示に大人しく従い、カウンター席を立つ。

そして、

「何ボサッとしてんの!
 あんたも一緒に行くわよ!」

聖羅は、そう言って和也をせき立てた。


そんなやり取りをしている間に、スミレはブレンドを1つ、アイスコーヒーを2つ、トレーに乗せる。

そして、3人はスミレを先頭に店の奥へと消えた。
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