堕天使と呼ばれる女
コーヒー3つをトレーに乗せたスミレを筆頭に、店の奥へと続く通路を歩き、更に地下へと続く階段を下りた。

下へ降りるに従って、徐々に店の明るい雰囲気から、薄暗く謎めいた雰囲気へと変わっていった。

一番奥の扉の前で止まり、一呼吸おいてからスミレは扉をノックし、静かにドアノブを回した。

スミレによって開かれた扉の向こうにあった部屋は、多くの本や資料に囲まれていて、地震でも起きたら最後、埋もれてしまいそうなくらい詰め込まれた空間だった。

何だか、秘密の研究でもしていそうな、そんな空気を漂わせている。


そして、その部屋の中央には、アンティーク調の大きな木の机が置いてあり、そこに1人の老人が静かに座っていた。


「おじいさま、聖羅さんたちをお連れしました。」

スミレがそう伝えると、老人は静かに顔を上げた。

白髪で、顔は少し面長のおじいさん。

薄暗い部屋の明かりのせいか、顔色が少し悪いようにも見える。

「スミレ、ありがとう。

 ふたりとも、そこへかけなさい。」

そう言って、聖羅と和也は、老人から、机を挟んだ向かい側にある椅子を勧められた。
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