堕天使と呼ばれる女
真相の一端
「失礼します。」

そう言って、聖羅は老人に向かって左手、和也は右手の椅子に腰を下ろした。

「コーヒー、こちらに置きますね。」

そう静かに言ったスミレに対し、祖父は顔を上げてこう言った…

「本当にありがとう…私のワガママに付き合ってくれて…
 後の事は、よろしく頼む。」

「お任せください。」

そうハッキリと答えて、静かにスミレは部屋を後にした。

さっきのスミレの様子といい、この微妙なやり取りといい、明らかにおかしい…

しかし、そう思いつつも、今はそれを聞くべき時では無い…

聖羅はそう判断していた。


スミレの祖父は、ブレンドコーヒーに手を伸ばし、愛おしそうに一口飲んでから、ソーサーにカップを戻した。

その様子を一通り見てから、聖羅は口を開いた。


「渡辺教授、ご無沙汰しています。

 今日は、かねてからのお約束を果たしに参りました。」


「ふふ…聖羅、ワシの事をもう"教授"と呼ぶ必要は無いのだよ…」

「そうは言われましても、私にとって、いつまでも教授である事に変わり無いですよ。」


「…うむ、そうかもしれんな…

 聖羅、よく来たな。
 ワシは、この日をずっと待っていたよ。」

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