堕天使と呼ばれる女
遺伝と拘束

あれよあれよと言う間に、そのお見合い写真の女性に会う日となってしまった。


いつもは乱れた白衣をまとってる直行も、今日はさすがにキリリとしたスーツ。


院長は立ち会わなかったものの、それなりに畏まった場となった。



綺麗な和装で登場した彼女、福島さくら。

彼女の印象は、ほとんどが写真のイメージそのままだったが、どこか寂しげで、とても悲しい目をしていた。


中に闇を宿しているようにさえ見える瞳。


直行は、どうしても、その「目」が気になった。


彼女の「悲しみ」の理由をどうしても知りたい。


直行にとっての第一印象はそんな感じだった。


ただ、ここでも新たな疑問が産まれた。

彼女を伴って現れたのは、親では無かった事だ。

なんと、病院理事の1人だった。

そして、出逢って早々に、理事から釘を刺された。

「彼女の家庭環境は複雑なんだ。家族の話はしないでくれたまえ。」


このお見合い、謎は多かったが、彼女はそんな事を差し引いたとしても、とても魅力的な女性だった。
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