堕天使と呼ばれる女
「私、そんなの知らない…覚えてない。」
聖羅は少し戸惑った様子を見せていた。
命を狙われるのが“常”の聖羅が、焦りの色を見せる事は非常に珍しい。
「それは仕方ない。
わしが、気付くことを阻止した。」
…
「「はい!?」」
…
「ふぉっ、ふぉっ!!
おまえさんたちは、気が合うようじゃのぉ!実に意気が合っとる!!
聖羅の能力については、お友だちの事故が起きた際、わしが隠蔽した…」
「「隠蔽!?」」
さっきからのツッコミがハモっている事で、教授に笑われているのが分かっていても、聖羅と和也にとってはそれどころの話ではない。
「わしはあの事故で、聖羅が無能力の力を持っているのでは無いかと推測した。
しかし、あの場に居た誰もが、暴走した子どもが力尽きたものだと考えていた。
そこでわしは、他の研究者には秘密裏に事故の状況と、聖羅の遺伝子、そして自分が研究して得た「自分の遺伝子」を照らし合わせる事にしたんじゃ。
案の定、わしの推測はヒットした。
遺伝子成分の一部が一致したのじゃ。ごくわずかであったがな…。
ただ、この情報の公表は、ちとインパクトが強烈すぎるじゃろう?」
そう言って、教授はちょっとおどけてみせていた。組織に隠された事実を語っている割に、教授はどこか楽しそうだ…。
まるで、小さな子どもがお茶目な悪戯でもしたかのよう。
「それに、こんな重要な情報、組織にくれてやる義理は無い。
という事で、わしも他の研究者たちの意見に同調する事にした。
幸いにも、まだ「自分の遺伝子」について詳しい報告は組織にしてなかったしのぉ。」
その時、“ごくり”と生唾を飲み込んだ音が、聖羅から聞こえた。そして、聖羅が口を開いた…
「その能力は、遺伝子操作や薬によって、誰でも得られるものなのですか?」