堕天使と呼ばれる女
『思い切って行動に移した自殺を、一度、邪魔されてしまったら、もうそう簡単には次には踏み切れ無い…
まあ、ノートパソコンは壊れたけど、命と比べれば安いもんよね。』
窓の外の流れる景色を見ながら、聖羅はそんな風に考えていた。
そして、次の駅で降りた。
電車にはとりあえず乗ってみたものの、聖羅にとって公共交通機関なんて、基本的に関係ない。
極端な長距離で無ければ、簡単にテレポート出来るから。
長距離のテレポートは、その時の体調や集中力などに依るし、組織に気付かれる危険度が高くなるから、あんまりやらないだけ…
『ふぅ…
どうして、簡単に“死”を望むかなぁ…
親に捨てられ、戸籍も抹消され、世の中から存在を消された私でさえ、未だにしぶとく生きてるっていうのに…
まあ、確かに私だって“何故生きてるか”を問われると答えられないけど…
でもこの世の中、いちいちそんな事を考えていたら、生きてなんていけないよ…』
駅を離れて、小高い場所にある公園に着き、街並みを眺めながら、聖羅はぼんやりとそう考えていた。
「堕天使って言われる割には、結構“良いこと”してるんだな」
『えっ!?』
後ろからふいに聞こえたその声に、聖羅は慌てて反応して振り返った。