堕天使と呼ばれる女





「こりゃ、どういうことだ!?
 教授は!?

 手品か!?」

和也は、目の前で起こった事が理解出来ず、子どものように慌てふためいていた。

「違う…

 …教授は、死んだ。」

「どういうことだよ!?
 意味分かんねぇよ!!

 何で、おまえはそんなに冷静なんだよ!!」

その落ち着いた口調が気に入らず、大声で怒鳴った和也の視線の先に居たのは、声のトーンとは似ても似つかない表情の聖羅だった。

聖羅は顔面蒼白のまま、ただひたすら“骨と皮”だけの教授を見ていた。


とにかく黙って、表情を凍りつかせたまま、ジッと見ていた。


和也は、何度か声をかけたものの、反応が無いため、そのまま聖羅の様子を見守った。




どれくらい経ったのだろうか…。




実際には、何分も経っていなかったのかもしれない…。
しかし、この状況と沈黙の時間は、ほんの一瞬であっても、永遠を感じさせる時間だった。


「和也、スミレさんを呼んできて。」

やっと教授から目を離した時、聖羅は和也にそう言った。

「了解

 …ってか、この状況、スミレさんに何て説明すんだよ!?」

聖羅が口を開いたと同時に、和也は再び大騒ぎ…。

でも、決して聖羅が慌てる事は無かった。

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