渡せなかったラブレター
先生は
優しくて
学校のお母さんみたいだと
ずっと思っていた

肩までの
緩やかな髪型が
それを助長するように
ゆれていた


「前原さんと遊ぶようになって
西田君あんまり
暴れなくなったと思うよ」

「そうなんかな」


確かに
章弘は落ち着いていた

きっと
寂しさを
開放できる場所を
見つけたからだ


「前原さんも、楽しそうにしてて
よかったなぁって先生見とったもん」


あたしも
前より楽しい明日が来る
そんな毎日を
見つけていた

先生は体温計を
確認しながら
あたしをベッドに
促がした


「ここでいい」


大きな黒い長いすに腰掛けて
届かない足を
ぶらぶらさせながら
あたしはずっと
きれいにされた
白い床を見ていた


「ケンカでもしたん?」


黙ってただ
床を見続けた


「二人はよく似とるもんなぁ」


やっぱり似てるんだ
それは
あたしにはうれしい言葉


「あたしたぶん、
悲しませることした」

「悲しませること?」


先生の問いかけには
答えなかった

そして
お母さんが来てくれた



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