渡せなかったラブレター
確信
寒い寒い冬がやってきて
雪がちらちらする日も
時々あった

でも
子供には
寒さなんて関係ない

雪が降ったって
大人みたいに
困った顔なんてしない

むしろ
満面の笑顔で
空を見上げる

今でも
雪が降るたび
子供に戻りたいと思う

できることなら
あの頃に戻りたいと
心から思う


相変わらず寒い日
二人もまた相変わらずだった

孤立して
避けられて
群れからはみ出していた

だけど
全然寂しくはなかった

だって
二人ぼっちだったから

あたしの隣には章弘
章弘の隣にはあたし

それだけで
十分だった


「寒い」

「冬やからな」

「寒い」

「しゃーないやんか」

「寒い」

「お前さっきから
そればっかりやな」


あたしは
冬が苦手
寒いのが苦手

手をポケットに入れて
体を小さく折り曲げて
体操座りをしている
あたしを見て
章弘は
「寒がりすぎ」と
いつも笑った

章弘はいつも
はにかんだように笑う

あたしにしか見せない
その笑顔は
あたしだけの
宝物だった


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