渡せなかったラブレター
チャイムが鳴って
長い休み時間が始まった

どんなに寒くても
休み時間になれば
必ずみんな
校庭へと繰り出す

サッカー好きな章弘は
あたしをよく
外へ誘った


「寒いか?」

「寒い!」


靴を履き替えながら
上目で
めいいっぱい
寒い顔をして見せた


「しゃーないなぁ」


そう言って
章弘は自分の上着を脱いで
あたしによこした


「これ着とけ」


なんてマセガキ

思い出すと
笑ってしまう


「ええって!そっちが寒いやん」

「俺は大丈夫。寒いの平気やから」

「風邪引くって」

「引かんって、もう!」


かたくなに断るあたしに
痺れを切らして
章弘は
あたしを上着で包んだ


「着ーとーけ」


言い聞かすように
一言ずつ
はっきりと
あたしに言葉を
植えつけるように言った


「な?」


分かったか?と
確認を取るように
あたしを覗き込んだ

その目を
あたしは
見ることができなくて
ただ「ありがと」と
小さくつぶやいた



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