渡せなかったラブレター
新しいクラスにも
慣れてきた頃
帰りの中庭で
偶然章弘に会った

「よぅ」

「…よぅ」

久しぶりに見る
章弘は
相変わらずで
でも
新しい章弘に
成長している
そんな風に見えた

「西田くん、ばいばーい」

「ばいばい」

章弘のクラスの女の子が
横を通り過ぎていった

軽く声交わせるくらい
仲良くなれとるんやん

「新しいクラスどう?」

「…」

何も
言いたい言葉が
出てこない

もう
二人っきりの
あの頃には
戻れない

章弘は
あたしの知らない
章弘になろうとしているんだ

そう思うと
寂しくって
イラついて
悲しくて
涙が出そうになった

なんで
こんなことで
涙が出るのか

なんで
こんなことで
イラつくのか

それが分からなくて
ただただ
苦しかった

「なんやねん」

そう言って
怒り気味に
あたしの前に
立ちはだかった章弘を
あたしはとうとう
無視して
走り去った
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