渡せなかったラブレター
『暴走族のバイクの
後ろに乗っている
西田くんを見た』

だとか

『西田君は
タバコを吸っているらしい』

だとか

『この前他の学校の子と
ケンカして警察に
補導されたんやって』

だとか

章弘のよくないウワサは
あっちこっちから
耳に入ってきていた


悪くなってしまった
昔の知り合いに聞くと
バスケの先輩に
タバコを教わって
暴走族にも
やっぱり
関わっているらしかった

なんでそんなものに
関わってしまったんだろう

あたしは
心配でたまらなかった

そして
そんな事実は
信じたくなかった


孤高の一匹狼


章弘は
そんな気高いものだと
あたしは思っていた

どうして
そんな闇に
踏み込んでしまったのか

章弘が抱えていた
闇は
そんな邪悪なものじゃ
なかったはずなのに


今の章弘がもつ闇は
もう
あたしには
計り知れない闇だった


章弘が
どんどん
どんどん
遠ざかっていく

章弘の笑顔から
はにかんだ
あの優しさは
もう
ひとかけらも
見られなかった




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