渡せなかったラブレター
2年生の冬
また寒い
あたしの苦手な季節が
やってきた

毎年やってくると
分かっていても
どうも慣れたりは
しないものだ

冬が来るたび
あの日の
あったかい出来事を
思い出していた


ある日
いつになく
大雪が降った

警報は出なかったから
みんな寒い中
雪にまみれて
登校した


あたしは
少し困った顔を
してしまったかもしれない

大人がするように
空を
恨めしそうに
見上げたかもしれない

小学生の頃の
あの純粋さを
少しずつ
少しずつ
失っていくようで
なんともいえない寂しさが
心の中を巡った


章弘も
この雪を
見ているだろうか


忘れたはずでも
ふとした瞬間
前触れもなく
浮かんでくる
章弘の影


まだ
忘れきれない
自分を見つけるたびに
その想いの大きさに
気づかされて
また
少しの間
自己嫌悪の渦に
ぐるぐる
巻かれた


そんな日に
小さな奇跡が
起きた











< 32 / 65 >

この作品をシェア

pagetop