渡せなかったラブレター
確かな存在
それからも
里井くんと
一緒に帰ることは
何度もあった

いつも
誘われるばかりで
あたしからは
誘わなかった


誘えない
理由があった


章弘と比べてしまうから
一緒にいるほど
辛かったのだ


「明日の授業って、
一週間で一番しんどい
時間割よな」

「ホンマにしんどいよなー」

「休もかな」

「ずるいわ。ちゃんときぃよ」

「どうせ来るんやけどな」


いつもの
たわいもない話


でも
それから
少し歩いたところで
ある出来事が起きた



里井くんが
あたしの手を握った



別にそれだけのことだった


だけど
あたしは
それがすごく嫌だった


そして
その理由は
手をつながれた瞬間に
分かってしまった


章弘じゃないから


章弘じゃないなら
手なんかつなぎたくない

章弘じゃなきゃ
手をつなぐ意味がない

あたしの全ては
自分でも気づかないほどに
章弘へ続いていた

それに
気が付いてしまったら
もう里井くんとは
一緒にいられなかった


そうして
また一人
不本意に
友達が減った


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