渡せなかったラブレター
話していた章弘が
黙った


沈黙に
終わりかけの冬の
冷たい風が
まとわりついて
あたしは急に
怖くなった


あたしの手のひらから
章弘の指が
するりと抜けた

そして
章弘の手が
あたしの手を包んだ

つなぎ直された
その手は
あたたかくて
優しくて

一瞬よぎった
不安や怖さを
あっとゆう間に
消し去った


つないだ手は
心と心まで
つないでいるような気がして
あたしは何度も何度も
心の中で言った



好きだよ


大好き


ずっとずっと
好きだったんだよ



言葉にしなければ
伝わらない

でも今は
そんなことどうでもいい


あんなにしゃべっていた
章弘は
一気に無口になり

その代わり
手をぎゅっと
力強く
つないでいてくれた


あの時
言えたらよかった


好きだよって
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