渡せなかったラブレター
あのね、

章弘に言いたいことがあったんだよ。

何年も何年も暖めてきたから、

笑わないで聞いてね。



章弘が好きでした。



本当に本当に
大好きだったよ。



小学一年生の時、

上着貸してくれたの覚えてる?

あの頃、あたしは章弘を好きになったの。

あたしの初恋。

分かってた?

気づいてた?

寒いのなんて気にならないくらい、

すごくうれしかったんだよ?

上着貸して着せてくれた人なんて、

章弘が最初で最後だもん。

きっとずっと忘れないよ。




やらないって言ってたのにくれた、

あのキーホルダー。

章弘がいなくなったのが悲しすぎて、

見るとつらいから、

捨てちゃった。

ごめんね。

だけど、

それまでずっと大事に持ってたよ。

もうどこ行いったかわからんーって言いながら、

本当は大事にしまってた。

紗世へって裏に書いてあったの、

何回も眺めてにやけてたよ。

あれはあたしの、

宝物だった。






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