夏の思い出彼は今?
泳いで泳いで

夏の思い出と言えば、やつの事を今でも思い出す。


名前は田口一雄平凡な名前だ。


しかし、やつは変わっていた。

どう変わっていたかと言えば泳ぐのが好きで仕方なかった事だ。

夏になると海開きの前から隠れて泳いでいた。

聞くと子供の頃からのようだった。

学校の宿題も忘れて夏休みの登校日も忘れて泳いでいた。


それで先生に怒られても泳ぐのが好きなんです。出来たら年中泳ぎたいんですと堂々と答えていた。


先生も呆れて諦めていた。

なあ、年中泳げたら幸せだよなあと言うのがやつの口癖だった。


中学二年の夏休みもやはり、やつは泳いでいた。



俺も泳ぐのは好きだったが、やつには付いていけなかった。


クラスの連中は呆れてある程度付き合ったら勝手にやつが泳ぐのを見ていた。


泳ぎは抜群に上手かった。


クロールから平泳ぎ、背泳ぎ何でも出来たしスピードも早かった。


県大会に出ても圧倒的勝利を飾っていたが本人は全国大会等は面倒で行きたがらなかった。


理由を聞くとプールは嫌いなんだよという理由と水泳選手になる気はないんだという事だった。


純粋に海で泳ぐのが好きだったのだ。


見た目も段々魚のように見えて来ていた。


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