これから、わたしは太陽を食べます
女の人が見えた。
すごく綺麗な、うっとりするような美女。
悲しそうに涙を流している。
『…本当に行かれるのですか?』
『ごめんね……でもぼくは君が大好きだよ』
『いえ、いいのです。情は…。あなたは日本神話の最高神、天照大御神の御子、私は中国神話の最高神、天帝の子一一決して交わってはならない、忘れてくださって結構です』
『そんな事言わないでくれっ、仕事が済んだらすぐ戻る。…いや、母上に聞いてみよう。ご配慮いただけるかどうか』
目を見張る彼女の肩を優しく彼は抱きしめる。
愛の伝わる光景一一
「里ちゃん?」
「っ、」
いきなり呼ばれ、ドキドキと心臓がはねた。
「な、なんでしょうか?」
「いや、お茶を持ってきてくれと…」
「畏まりました、ただいまもってまいります」
そそくさと部屋を出て、心臓を抑えた。
「……なにあれ…」
あんな、距離の近い愛。
下では見たことのない暖かさ、まぶしさに、思わず焼き付いた。
「……」
ふと、作戦を思い出す。
お色気作戦は効かないのではないのだろうか。
彼には愛してる女がいる。
効くわけないだろう。
「馬鹿だなぁ、素戔鳴尊も」
脳がない。
女がいるかどうかくらい、調べておけよ。