これから、わたしは太陽を食べます


女の人が見えた。


すごく綺麗な、うっとりするような美女。

悲しそうに涙を流している。


『…本当に行かれるのですか?』


『ごめんね……でもぼくは君が大好きだよ』


『いえ、いいのです。情は…。あなたは日本神話の最高神、天照大御神の御子、私は中国神話の最高神、天帝の子一一決して交わってはならない、忘れてくださって結構です』


『そんな事言わないでくれっ、仕事が済んだらすぐ戻る。…いや、母上に聞いてみよう。ご配慮いただけるかどうか』


目を見張る彼女の肩を優しく彼は抱きしめる。


愛の伝わる光景一一





「里ちゃん?」

「っ、」

いきなり呼ばれ、ドキドキと心臓がはねた。

「な、なんでしょうか?」

「いや、お茶を持ってきてくれと…」

「畏まりました、ただいまもってまいります」


そそくさと部屋を出て、心臓を抑えた。


「……なにあれ…」

あんな、距離の近い愛。


下では見たことのない暖かさ、まぶしさに、思わず焼き付いた。


「……」

ふと、作戦を思い出す。

お色気作戦は効かないのではないのだろうか。

彼には愛してる女がいる。

効くわけないだろう。


「馬鹿だなぁ、素戔鳴尊も」


脳がない。


女がいるかどうかくらい、調べておけよ。


< 11 / 59 >

この作品をシェア

pagetop