君にいざよう
君にいざよう


「……また寝てる」


思わず声を漏らしたのは、彼がここ、図書室でのうたた寝常習犯だからだ。


「あの、もう閉館時間です」


時計の針は6時半を指していて、館内には図書委員の私と、机に突っ伏して寝てる去年のクラスメイト、朔間 光斗(さくま あきと)だけ。


「朔間君、起きて」


こうして起こすのはもう何度目だろう。

声を掛けただけじゃなかなか起きないのは学習済み。

私は小さく溜め息を吐くと、ショートボブの髪を耳にかけてから、彼の肩に手を添えて軽く揺する。

白いワイシャツ越しに彼の体温を感じながら、揺すること数回。


「んー……」


ようやく瞼が震え、ゆっくりと開かれた。

普段はくっきりとした目をぼんやりさせながら私を見ると。


「望山(もちやま)ちゃん、おはよー……」


欠伸をひとつした。


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