君にいざよう


望山ちゃん、なんて親しげに呼ばれているけど、私と朔間君は仲良くもなんともない。

去年だってまともに話したのは数える程度だし。

そもそも、彼は私とは毛色が違う。

朔間君は軽音部に所属。

私は美術部。

朔間君は社交的で友達が多い。

私はお喋りが得意じゃなく、友達と呼べる人は少ない。

朔間君は表情がころころと変わる。

私は感情を表に出すのが苦手。

全てが真逆。

仲良くなれる気がしない。


朔間君はすっかり日が落ち暗くなった窓の外を見て「帰るのめんどくさー」と口にしながら立ち上がる。

……家に帰ってから寝ればいいのに、と心の中で呟いてから、私は机や椅子の整頓を始める。

そうすれば、朔間君はいつもと同じようにノロノロとした歩調で図書室を出て行った。

今日も本は借りないらしい。

本当に、ただ寝るだけなら家に帰ればいいのに。

図書室の椅子より家の布団の中の方が心地いいはず。

朔間君の行動は理解不能だ。


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