君にいざよう
図書委員の仕事を済ませ、帰宅する為に昇降口へと向かう。
冬の廊下は普段からひんやりとしているけど、今日はいつもより冷えていた。
雪でも降るんだろうか。
今朝の天気予報では一日中晴れだったけど──と、そこまで考えた時点で私の耳に届いた音。
叩きつけるような水音に、廊下の窓をみやれば。
「……嘘。傘持ってないのに」
容赦なく窓を濡らす強い雨に、私は僅かに肩を落とした。
昇降口でローファーに履き替えて、軒下からそっと空の様子を伺う。
夜だから少しわかりにくいけど、重たい雨雲は途切れ途切れで、どうやら通り雨のようだ。
これなら少し雨宿りしてれば止むだろう。
私はアイボリーの毛糸で編まれたマフラーを撒き直し、昨日から借りている文庫本を鞄から取り出す。
そして、生徒玄関の明かりを頼りに立ったまま読書を始めた。
その直後。
──ガタン。
下駄箱が開く音がして私は顔を上げ振り返り背後を見た。
するとそこには、もうとっくに学校から出たと思っていた朔間君がいた。