君にいざよう


「あれー? 雨宿り?」


呑気な声で話しかけられて、私は小さく頷く。


「そうなんだ。実は俺も傘なくてさ。仲間入れて」


話しながら黒いローファーに足を通すと、私の隣に並んだ。


「にしても、いきなりきたなー、雨」


黒いダッフルコートの前ボタンをしめながら、雨の様子を伺う朔間君。

私は再び文庫本に視線を落とし「通り雨だからすぐに止むと思う」と返した。


「そっか。でも、ちょい残念」

「……何が?」


彼の言葉に顔を上げる。

すると朔間君は、ニッコリと表情を緩めて。


「傘持ってたら、望山ちゃんと相合傘でラブラブできたじゃん?」


冗談を口にした彼。

どう返すべきかわからず視線を外し文庫本へ戻すと、朔間君は「な、なんちゃって」と誤魔化すように苦笑いした。


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