君にいざよう


本当は少しだけ緊張している。

彼の事をよく知らないし、何より彼は男子だから。

誰かと恋に落ち、付き合ったりしたことのない私には、こんな風に異性と二人きりで過ごすのは落ち着かないのだ。

朔間君は私の答えに「そうなんだ」と呟くと「じゃあさ、望山ちゃんが楽しい時ってどんな時?」と更に質問を重ねてくる。

私が楽しい時……

そんなこと考えたことなかった。

私は、何をしている時が楽しいんだろう。

瞬時には思い浮かばず、考え込んでいたら。


「俺さ、キミが笑ってるの見たことないんだよね」


寂しそうな淡い笑みと共に言われた。


なん、で。

何でそんな顔して、そんなこと言うの。


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