君にいざよう
しとしとと降っていた雨はもうそこにはなく。
「俺が、笑わせてあげれたら最高だけど」
照れたように笑う彼の視線から逃れるように空を仰げば、雲間から覗く十六夜の月。
「とりあえずさ、名前、呼んでみてよ」
強請られて俯いて。
頬に感じる熱と、高鳴る鼓動。
「……あ」
月も。
「あき、と、君」
私も。
「不自然。はい、もう1回!」
いざよう(躊躇う)
そんな冬のひと幕。
〜 Fin 〜
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