俺たちの妹・3
あれはまだ、俺と兄貴が高校生だった頃。
兄貴が高3で、俺が高1、美晴は6歳だった。
その頃の美晴は今よりももっと身体が弱くて、一ヶ月の半分は病院で過ごしていた。
入院中俺は毎日顔を出していた。
『美晴、おはよ。しんどいのどう?』
『ひなにぃ〜。みぃね、ちゅうしゃイヤなの。いたいのイヤなの』
病室を訪れた俺にギュッと抱きついて来た美晴。
『ん〜。でもそれをしないと美晴は元気になれないよ?』
『でもイヤなの。ケホケホッ……みぃはいたいのイヤ〜ッ……ゴホゴホ』
『みぃ、落ち着いて。ほら、息をゆっくりするんだよ。吸って〜吐いて〜』
俺は美晴の背中をさすりながら、落ち着くように声をかける。
『あら、日向くんおはよう』
担当看護師の宮本さんが来てくれた。
『おはようございます。美晴、今日はこんな調子ですか?』
『今日は少し検査が多いみたいでね。みぃちゃん、察知してるのよ』
宮本さんが苦笑する。
『美晴、俺も一緒に居るから頑張ろう?』
『………ひなにぃもいてくれる?みぃ、ひとりじゃない?』
『宮本さん、検査っていつやりますか?』
『午前中にするつもりだけど、日向くんが一緒に付いてくれるなら、夕方からに変更出来るか森先生に聞いてみるわ』
森先生とは、小児科で担当だった先生だ。
『お願いします』
森先生は、子ども達の気持ちを大切にしてくれる先生で、ある程度融通を効かせてくれる、優しい先生だった。
美晴も、産まれた頃からお世話になっている森先生には心を許している。
『美晴?宮本さんが、森先生に聞いてくれてるから、少し落ち着こう』
グスグス泣く美晴を落ち着かせる。
泣く事も体力を使うから、ほんとは泣かせたくないんだ……
『ひなにぃ……』
『大丈夫、大丈夫。美晴は1人じゃないよ』