ウソのコイビトになりました



「寝ろ。早く治せ」


「あ、いや、でも」


「いいから寝ろ。
……お前が退院したらちゃんと話すから」



これ以上何か言っても無駄だと分かり、口をつぐむ。



「おやすみ」


陽斗くんはそう言うと、ギュッと私の手を握った。


「お、おやすみ!」


初めはドキドキしたけど、次第に安心感に包まれる。



今更だけど、陽斗くんのこの手の温もりが、私を暗闇の中で助けてくれたんだ。



そんなことを思いながら、私は眠りについた。



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