涙色花火
──────…………
*3年後*
俺が死んで、5度目の夏がやってきた。
俺のお墓の前で、手をあわせているひとりの女の子。
色素のうすい髪を、おだんごにしている。
フッ……
夏におだんごにするの、ほんとかわんねぇ。
「翔陽ちゃん。みゆ、19歳の年になったよ。保育士になるためにね、いまがんばってるんだよ。
それとね、今日は報告があってきたんだ。
みゆ、あのお祭りにいくよ。翔陽ちゃんがいなくなってからずっといけていなかったんだけど、今年はいくんだ」
しってるよ。
ずっと、みてたから。
「今日着る浴衣はね、あの日きていたやつなんだよ。みゆ身長がのびなかったからまだ着れるんだ。すごいでしょ?」
それも、しってるよ。
みゆのお母さんが毎回手入れをしていて、新品同様なんだ。
まだ着れたってのには笑ったけど。
「じゃあ、そろそろいくねっ」
そう言って、俺に背をむけて走りだすみゆ。
よかった。ほんとうによかった。
さみしくないって言ったらうそになるけど、でもみゆがしあわせそうでよかったよ。
祭り会場にむかうみゆと、みゆと手をつないでそのとなりをあるく黒髪の男。
『みゆ』
そう口にして、みゆの顔をいとおしそうにみるそいつの顔をみると、みゆはほんとに愛されてるなって思う。
───そして……、
『翼』
そうよぶみゆの顔には、満面の笑みが。
白い生地に、おおきな紫の花が咲いている浴衣。
俺がみたかったけれどみれなかった、みゆの浴衣姿。
『みゆ、すっげぇきれいだよ』
いまなら、心から言えるよ。
大好きな、大好きな、みゆ。
しあわせになれよ───……。
番外編 翔陽side END*