涙色花火
「結優奈」
その声に、ひざにうずめていた顔をあげる。
「翼くん……」
翼くんのサラサラな黒い髪が、海風でやわらかくゆれている。
目の前に立っている男の子、神谷翼くんとは、この春に高校で出会った。
入学しておなじクラスで、席が出席番号順でとなりどうしだったことから、すこしずつはなすようになった。
おなじ学校の男の子で、きっといちばん仲がいい。
「また、ここにきてたんだ……」
そう言いながら、みゆのとなりに腰をおろす。
「“翔陽”って、まえにはなしてた結優奈になにも言わずにひっこしていったやつのことだよね?」
翼くんのことばに、コクンとうなずく。
翼くんには、翔陽ちゃんのことをすこしはなしてある。
「……結優奈がそんなに泣くなら、そんなやつなんかわすれて俺にしとけばいいじゃんか……。
ひっこしてから、1度も連絡きてないんでしょ?」
ボソッととなりからきこえてきた声に、胸がくるしくなる。
だけどすぐに、
「ごめん、結優奈っ!いまのきかなかったことにして!ただのヤキモチ」
翼くんは、そう言って立ちあがる。