涙色花火
「翔陽はみてないから」
そう言って翼くんは、みゆをやさしくつつみこんでくれる。
そして、スッとはなれると、
「ほら、泣きやんだ」
みゆのあたまをポンポンとやさしくなでてくれる。
これでほんとうに涙がとまるから、翼くんは魔法つかいだよ。
「ごめんね。ありがとう翼くん……」
翔陽ちゃんも、ごめんね……。
「ほら、帰ろう?」
先に立ちあがった翼くんが、みゆに手をさしだしてくれる。
その手をとって、みゆも立ちあがる。
そして、なにも言わずにみゆを家まで送ってくれる。
海青高校はみゆの家からいちばんちかい高校で、徒歩で通える距離にある。
それにふまえて翼くんは、みゆとはちがって電車通学をしている。