涙色花火
「結優奈も、おはよ」
翼くんのほうをみると、目があう。
みゆの名字は相川 で、高校に入学してはじめての席は、いまなっちゃんがすわっている窓際のいちばん前の席だった。
そして、そのとなりの席が翼くんだった。
それから1度席がえをしたのに、翼くんとはまたとなりの席になった。
しかも、おたがいにひとつうしろの席にずれただけ。
それがなんだかおもしろくて、そのことがきっかけで翼くんとはもっとおはなしするようになった。
「おはよう」
今日も朝から、翼くんはさわやかだ。
「結優奈は、神谷くんに愛されてるね」
なっちゃんはそう言って、ニコッと笑う。
みゆにあいさつをしてすぐにともだちによばれた翼くんは、みゆたちの会話にはきづいていない。
「……愛?」
なっちゃんの言ってることがよくわかんなくてききかえすと、なっちゃんはみゆの耳もとに口をちかづける。
「そうだよ、愛!まずね、女の子のことを下のなまえでよぶの結優奈だけだよ」
言われてみればたしかに、翼くんは女の子のことを基本名字でよんでいる。