涙色花火
「新名さんから、ここにいるってきいたんだ」
“新名”とは、なっちゃんの名字。
へへっ、て笑いながらみゆのほうへあるいてくる翼くんをみて、みゆは口をひらく。
ポケットでは、スマホがゆれている。
メールがきた証拠だ。
「……翼くん」
「ん?」
「みゆのこと、『みゆ』ってよばないで」
翼くんが目をみひらいたのがわかった。
ごめんなさい……。
だけど、このなまえはとくべつなの。
翔陽ちゃんだけ。
翔陽ちゃんだけが、そうよんでいた。
“みゆ”ってよびすてにしていいのは、世界でたったひとり、翔陽ちゃんだけなの……。
「っ翔陽ちゃんだけしか、そうよんじゃだめなの……っ」
みゆがそう言うと、翼くんはひどく傷ついた顔をみせて、ごめん、とひとことつぶやいた。