涙色花火

結優奈side




“8月4日”


毎年のその日、みゆが住んでいる街では花火大会が開催される。


海沿いにたくさんの出店が窮屈そうにならんで、ふだんは真っ暗でしずかな夜の海なのに、花火があがってあかるくなる。


テレビでとりあげられるほど有名な花火大会だから、県外から足をはこんできてくれるひともたくさんいる。


ちいさいときから、みゆはそのお祭りを毎年たのしみにしていた。


ふわふわのわたあめに、ひんやりつめたいかき氷。

真っ赤なりんごあめを片手にみる、カラフルな花火が大好きだった。


だけどそれは、毎年大好きな翔陽ちゃんがみゆのとなりにいるから。






いまから2年まえの、中学2年生の夏───。


その年の花火大会も、翔陽ちゃんといく約束をしていた。






その年はいままでの花火大会よりも、

とくべつな日になるはずだった───。


< 3 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop