涙色花火
───キーンコーンカーンコーン……
学校中に、HRおわりのチャイムが鳴り響く。
教科書とノートをカバンにいれていると、みゆの机に影ができる。
その影をたどりながらみあげると、もう帰る準備がおわったのか、スクールバッグをもった翼くんが立っていた。
「いく?」
「うんっ!」
いそいで、のこりの教科書をカバンにつめこむ。
みゆが立ちあがると、翼くんが先にあるきだす。
ドアにむかうとちゅう、なっちゃんの席をチラッとみると、口パクで、(が・ん・ば・れ)と言ってくれた。
そんななっちゃんにほほ笑んで、翼くんのあとをおいかける。
……このとき、いかなければよかったのかな?
いかなければ、
みなくてもいい現実を、みなくてすんだのかもしれない───。