涙色花火



『結優奈っ!』


バンッ!という音とともに、みゆをよぶ声。


声のしたほうへ顔をむけると、黒の軽自動車の運転席からママがおりてきた。


ママのおきにいりの、みなれた車だ。


『結優奈、車にのって?』


そう言って、みゆの手をとる。


だけどみゆは、その手をすぐにふりはらう。


『いかないよ!?みゆは翔陽ちゃんとここでまちあわせしてるの。みゆがどこかにいっちゃったら、翔陽ちゃんといれちがいになっちゃうじゃん!』


泣いたのかな。


ママの化粧がくずれている。


だけど、その顔をあえてみないようにぎゅっと目をつぶる。


どうして、そんないじわるなことを言うの。


翔陽ちゃんは、どこにもいかないもん。


みゆをおいてどこかにいっちゃったりなんか、そんなことぜったいにしないっ!


< 70 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop