涙色花火
1歩、1歩、ゆっくりと足を前にすすめる。
そして、さっき立っていたところからはみえなかった顔が、角度をかえてはっきりしてくる。
……ママっ。なにが、大丈夫なの……?
『……っ翔陽、ちゃん……』
どうしてここにいるの?
どうしてこんなところでねむっているの?
あたまのなかが、どうしてであふれる。
『……っねぇ、翔陽ちゃん!こんなところでっ───』
“なにしているの”
このことばがでなかった。
……だって、
ふれた翔陽ちゃんからつたわったのは、
みゆのしっているいつもあたたかい翔陽ちゃんとは、かけはなれていたから。