涙色花火
そのあとの記憶があやふやなんだ。
どうやってその部屋からでたとか、家に帰るまでのこと、それからどうすごしたのかとか、そんなことはまったくおぼえていない。
ただ、事故のようすをきかされたときのことは鮮明におぼえているんだ。
翔陽ちゃんは、信号無視をした乗用車にひかれてしまった。
十数メートルふきとばされて、事故直後は横断歩道がないところに横たわっていたんだけど、事故の目撃者のひとが翔陽ちゃんはちゃんと横断歩道をわたっていたと証言してくれた。
それをきいたとき、運転手がにくくてにくくてしかたがなかったんだ。
交通ルールをちゃんと守っているのに、どうして翔陽ちゃんは命をおとさなければならなかったの?
ひとの命をうばったにんげんなのに、
どうしてそのひとは、
この先、息をすることがゆるされるの……?
そんなの、おかしいじゃん!
どうしてなの!?
だけどつぎに耳にしたことばで、みゆの顔は青ざめることになる。