涙色花火
そんなとき、俺のなまえをよぶ声がしてその声のもとををさがすと、海青高校の屋上でみゆの親友の奈月が空をみあげていた。
『なに?』
声にはならない。
心のなかでしか思うことができないから、奈月にはとどかない。
だけど俺は、返事をする。
そして奈月は、口をひらく。
「……翔陽くん。結優奈ね、前にすすめそうなんだよ」
そうつぶやく奈月の顔は、すこくくるしそうだった。
「翔陽くん、そこから結優奈のことみてる?奈月たちからはみえないけど、きっと翔陽くんなら結優奈のことを見守ってくれてるよね。
結優奈すっごく悩んでたんだよ。すっごくくるしんでたんだよ、翔陽くんのことで。そこからみてたらわかるよね?でもやっと前にすすめそうなの。
だけどね、たぶん翔陽くんのことを想うと、あと1歩がふみだせないんだ。
ねぇ、翔陽くん……結優奈はもう、しあわせになってもいいよね……?」
奈月のことばにハッとする。
そうだ。
みゆは生きていて、俺とはちがうんだ。
すすんでいるから、これからいろんな出会いもある。
もういない俺が、みゆのきもちの変化にわがままを言っていたらだめなんだ。
俺は、ぎゅっとくちびるをかみしめる。
でもやっぱり、いますぐには応援はできねぇ。
だから、もうすこしだけ……。
……かわいい、かわいい、俺のみゆ。
大好きだよ───……。
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