空を祈る紙ヒコーキ
「アタシ、涼とあの感覚を共有したいよ」
「同感だな」
こういう会話が楽しいんだろう。そんなつもりはないかもしれないけど先輩風を吹かせている二人を見て、自分だけその楽しさを知らないのが悔しくなる。
「まず私は詩を書かないとね。早く同じ目線で話せるようになりたい。がんばるよ」
「作詩と同時に涼は歌うことに慣れないとな。ベタだけどまずカラオケで慣らそ」
「だね。音が反響するカラオケボックスの方が歌の上達も早いっていうし!」
「でももう今日は遅いし、カラオケでの練習は明日の放課後にしよ」
「ですね。アタシも帰らないと」
そろって部室を出た私達は、真っ暗な校庭を背に校門を抜けた。
「アタシんちすぐそこなんですよ。生徒会長も今日はありがとうございました。涼、また明日ね」
「バイバイ」
愛大と別れ、私は空と共に駅への道を歩き出した。周囲には仕事帰りらしき大人がけっこう歩いていて、私達みたいに制服を着た高校生の姿はなかった。
「お母さん怒るかな。こんなに帰り遅くなったの初めてだし」
「大丈夫。俺も一緒に怒られるから」
優しくこっちを見つめてくる空を見て、予想以上に深く胸が痛んだ。私はこの人を好きになったらいけない。分かっているのにドキドキしてしまう。